お勉強方法 3

「お勉強方法 2」の内容をマスターしたあなたは、ようやく本人訴訟の入り口に立ったに過ぎません。
ここからは本格的な内容になって来ます。

民事訴訟法 伊藤眞 有斐閣

こちらの本ですが、ロースクールの教科書や各法律事務所に置いてあったり、東京地裁地下の売店でも売っている民事訴訟法の「辞書」のような本です。筆者も隅から隅まで覚えているわけではありませんが、各条文に関連した判例も載っているので手元に置いておくと役に立つでしょう。


民事尋問技術 加藤新太郎 ぎょうせい

 

こちらは証人尋問のやり方が書かれている本です。本人訴訟では相手に弁護士がついている場合はどうしても経験不足が否めないので、経験不足を補うためにこういったノウハウ本も読むといいかもしれません。

 

著作権法 高林龍 有斐閣

 

筆者の裁判は著作権が絡むものだったので、これも読みました。民法民事訴訟法だけでなく、事件の内容から個別の法律も当然学習する必要があります。あなたの訴訟内容と照らし合わせて関係のある本を、条文すべてを網羅していてわかりやすい本を立ち読み等して選択してください。

 

名誉棄損の慰謝料算定 西口元他 学陽書房

 

こちらは実際の裁判の請求金額と認められた金額を網羅した本です。裁判での損害賠償請求には金額の相場のようなものがあり、あまり過大な請求をしても印紙代の無駄になるだけです。特に交通事故関連では赤本・青本といった算定基準をまとめた本もあるようです。

 

 

 

 

裁判所のお作法 1 「傍聴」

「お勉強方法 1」で裁判の傍聴をしましょうと書きましたが、ここで独特のお作法があります。法廷入口の廊下に「傍聴についての注意」と書かれたプレートが掲げられてあり、携帯電話の電源を切りましょうとか静かにして下さい的な事が書いてありますが、そんな一般的なことを書いても仕方が無いので筆者が体験したことを書きます。

 

まず誰もいません。

 

マスコミが注目するような事件で無い限り、傍聴者は滅多にいません。法廷に入ると書記官にガン見されること請け合いです。
筆者の場合は書記官から「今日は何しにいらしたのですか?」と聞かれたり、原告と被告両方の弁護士が「なんで人がいるの」とひそひそ話をしているところまで出くわしました。基本的に裁判とは修羅場の人がやるものなのです。そういう修羅場ど真ん中の人に近づきたがる人はいない。筆者はそう考えています。近年裁判官の質の低下がささやかれていますがこの辺がひょっとして原因なのではないか?と勘ぐってしまいます。

 

また慣例として法廷で起立をするというものがあります。

 

あなたが本人訴訟をするなら

1 裁判官が入室した時
2 証人の宣誓時
3 証人に尋問する時
 
に起立をすることになりますが3以外は傍聴でも同じです。この場合には取り合えず起立してしまうのが無難です。さらにここでも筆者が体験したことがあります。

法廷によってまるでやり方が違うのです。

まるで学校の学級委員のように「起立!令!着席!」をやる書記官やら、「傍聴席の方も起立願います。」と裁判官が音頭をとっているものやら、裁判官も書記官も何も言わずにササっと着席して裁判を始めてしまうものやらまるでやり方が違うのです。裁判官は憲法で独立が保証されており、こういう細かい所は人によって違うということが如実に表れています。

一見こぼれ話のようですが、「細かい所が人によって違う」所は頭に入れておいた方がいいでしょう。

裁判は裁判官の心証で決まるので、本人訴訟を起こして担当裁判官が決まったらその裁判官の裁判(証人尋問)を傍聴して裁判官の性格を大まかに把握するのも一つの手かもしれません。

 

この手のこぼれ話として

 

裁判官! 当職そこが知りたかったのです。 岡口基一他 学陽書房

 

がかなり正直に裁判官の内心を書いているので興味があったら読んでみるのもいいでしょう。

 

 

 

 

お勉強方法 2

筆者おすすめの勉強方法を紹介したいと思います。最初は簡単な所から始め、徐々に難しくして行く方法です。同じような内容を難易度を徐々に上げて学習し、反復し、頭に叩き込みます。まずは簡単な本から覚えましょう。「はじめに 2」でも紹介したのですが、

 

ぶんこ六法トラの巻 民法      三修社

ぶんこ六法トラの巻 民事訴訟法   三修社

ぶんこ六法トラの巻 刑法      三修社

 

この手の初心者向けの本から学習しましょう。値段も比較的安く、中古の本もあります。これらの本を読んですべて覚えても本人訴訟ができるとは到底思えませんが、最低限の知識だと思って下さい。本人訴訟の出来ない刑事事件関連の刑法の本も入っていますが、尋問や証拠に不法行為が含まれることがあるのでこれも知識として身につけた方がいいでしょう。

 

初心者向けの本の学習が済んだら次はハンドブック系の本を勉強しましょう。

 

本人訴訟ハンドブック      矢野輝雄  緑風出版

訴訟は本人で出来る       石原豊昭他 自由国民社

 

これらの本は本人訴訟用に書かれた本です。訴訟を民事訴訟法の流れに沿って学習でき、訴状や準備書面等の書式の見本もついているのでぜひ手元に置いておきたい本です。

ここまで学習が進んだら次におすすめするのは実際に裁判所に行って傍聴又は記録の閲覧をしましょう。本で知識を身に着けても実際の雰囲気まではわからないので行く価値はあります。

東京地裁の場合は入口から入って警備員がいる受付の横に今日の法廷の予定が閲覧できます。証人尋問と予定が書かれているものを傍聴しましょう。特に弁護士がどのように尋問しているかじっくり観察して下さい。あなたもこのように尋問されるorするかもしれませんから。

また、訴訟記録は閲覧することができます。印紙150円と印鑑と本人確認書類が必要です。その他事件番号も必要なので裁判所HPの裁判例情報で事件番号を控えて持って行きましょう。ただし訴訟記録は5年経つと判決原本や和解調書を除いた記録は廃棄されてしまうので、あなたの訴訟と同じジャンルの訴訟で出来れば5年以内のものを閲覧することをお勧めします。運よく5年以内の記録があったら準備書面や甲号証など普段見ることのできない部分をよく見てください。
準備書面は弁護士がどのようにやり取りしているのか大変参考になります。甲号証はどのように証拠収集しているか。
東京地裁の場合はコピーとメモはOKなので、これはと思った所はコピーをとってもいいでしょう。

記録閲覧は午前中に申請しても閲覧できるのは午後になるので、午前中に閲覧申請してその後法廷を傍聴し、次の日に記録閲覧と法廷傍聴するといいでしょう。2日間掛かりますがお勧めの方法です。

 

最後に訴訟のやり方がわかる本として

 

弁護士いらず          三浦和義  太田出版

 

をお勧めします。いわゆるロス疑惑事件の三浦和義が、マスコミ相手に民事訴訟を起こした時の記録が、訴状から準備書面・尋問調書まで入っており、一つの訴訟の記録がすべて網羅された物になっています。あなたが名誉棄損やプライバシーの侵害で訴訟を考えているなら、必ず読みたい本です。マスコミ相手の判例も網羅されています。

 

ここまででちょっと自分には難しい、わからないという方は素直に弁護士に相談しましょう。本人訴訟は1つの手段に過ぎないのです。無理に本人訴訟にこだわって負けてしまったら元も子もありません。訴訟に勝つために行動しているのだから、最善の方法を選ぶことが一番いいことです。ここまでに身に着けた知識や経験も無駄にはならないと思います。

お勉強方法 1

筆者の勉強方法を紹介したいと思います。法律の本は小難しく、訴訟の内容によっては全く勉強しなくても済む部分もあるので自分に必要な情報を抽出する必要があります。そこで筆者は本を読みながら自分の訴訟に必要そうな条文や判例や注意点をエクセルファイルに書き出しました。改めて書き出すことでより記憶しやすくなります。かなりの量の本を読みましたが書き出したのは500項目くらいです。これが自分専用の「訴訟マニュアル」となり訴状や準備書面を書く時に重宝しました。

 

インターネットではe‐GOVという政府がインターネット上で公開している法律の条文も参考にしました。筆者の場合、民法のいい本がなぜか見つからなかったのでこちらで閲覧しました。裁判所のHPでも裁判例情報を検索できるようになっており、ここでもかなり判例を読み込みました。有名な裁判なら普通のネット検索で事件情報が出てくるのでこれを裁判所の裁判例情報で調べてもいいでしょう。

 

図書館も活用しました。最近ではどの図書館にどの蔵書があるのか検索でき、さらに地元の図書館に無い本も他の図書館から送ってもらえるシステムもあるようです。

 

ヤフオクやアマゾンの中古販売も利用しました。法律の本は高い本が多いのですが、中には中古なら異常に安い本もあるので検討してみてはいかがでしょうか?(ぶんこの民法などは送料込みで300円程度で手に入れました。)

はじめに 4 「洞察力」

筆者が考える本人訴訟に必要なモノとして洞察力を挙げたいと思います。洞察力とは目に見えない所を見抜く力のことです。
本人訴訟を始めようとする人は余程のことが無い限り裁判は一生に一度あるか無いかだと思います。そのため経験不足は否めず、法曹界独特のルールや間違いや意見などに翻弄され、小難しい手続を間違えたり、これらの間違いで裁判官の心証にまで影響を与えてしまうことが多々あると筆者は考えます。後述で詳しく記述したいと思います。

はじめに 3 「資金」

本人訴訟の場合、弁護士費用が掛かりません。費用は申立手数料と予納郵送料と証人尋問の予納、事務関連費といったところでしょうか。あなたが訴額100万円の相手が1人の訴えを提起したとして(東京地裁の場合)、申立手数料が1万円、予納郵送料が6000円、証人尋問1人と事務関連費で大体6万円前後と言ったところでしょう。請求通り100万円が認められたとして儲けは92万4千円です。


いかにも儲かりそうな話ですが留意しなければならない点があります。
あなたがゼロから勉強を始めて法廷で戦える知識を身に着けるまで最短で6か月は掛かると筆者は考えます。さらに1審から3審まで戦ったとしてこれらの平均審理期間を足すと18か月になるようです。合計で24か月です。勉強期間の6か月は時間のすべてを勉強に向けられる場合です。定職に就きながら勉強するならば勉強期間は確実に伸びるでしょう。訴訟がすべて終わるまでの生活費も考慮しなければなりません。家族がいれば家族に協力をお願いすることも考えましょう。割に合うのか会わないのか。割に合わなくても戦うのか。ここでもやる気次第かもしれません。


費用の面で筆者が経験したこととしてFAXが大きいです。東京地裁では相手に直送できるものは郵送かFAXなのですが(他の裁判所ではEメールでできる所もあるようです。FAX機を買う前に管轄の裁判所に確認した方がいいでしょう。)、このFAX機に面食らいました。最近の家庭用のコピー機にはFAX機能がついており、PCでEメールのように送受信ができる(準備書面等は押印が必要なので送信は従来通り手作業。)のです。簡単な訴訟で証拠書類も被告の数も少ないなら従来のFAX機能付き電話機又は郵送とコンビニ等のコピー機でも間に合うでしょうが、これ以外ならFAX機能付きコピー機がおすすめです。最近のエコタンクなどの大容量インクタンクがついているモデルならば印刷費も安上がりのようです。

はじめに 2 「やる気」

本人訴訟に必要なモノはあなたの

「やる気・資金・洞察力」

です。

 

本人訴訟はとにかく手間がかかり、知識もかなり身につけなければなりません。

弁護士と同レベルの知識を身に着け、さらに法廷で尋問もしなければなりません。

法廷で訴えた相手に会うことも考えられ、訴訟の内容によってはストレスも相当なものになるでしょう。

 

筆者が読んだ本一覧

 

ぶんこ六法トラの巻 民法      三修社

ぶんこ六法トラの巻 民事訴訟法   三修社

ぶんこ六法トラの巻 刑法      三修社

伊藤真民事訴訟法入門       伊藤真   日本評論社 

臆病者のための裁判入門       橘玲    文芸春秋

個人情報保護法の解説        中島成   ネットスクール出版

本人訴訟ハンドブック        矢野輝雄  緑風出版

訴訟は本人で出来る         石原豊昭他 自由国民社

メディア判例百選          有斐閣

民事尋問技術            加藤新太郎 ぎょうせい

弁護士いらず            三浦和義  太田出版

著作権法              高林龍   有斐閣

名誉棄損の慰謝料算定        西口元他  学陽書房

民事訴訟法             伊藤眞   有斐閣

民事訴訟マニュアル上下       岡口基一  ぎょうせい

要件事実マニュアル         岡口基一  ぎょうせい

裁判官Who’s Who            現代人文社

企業法務のための民事訴訟の実務解説 圓道至剛  第一法規株式会社

民事控訴審ハンドブック       松本博之  日本加除出版

裁判官! 当職そこが知りたかったのです  岡口基一他 学陽書房

裁判官の視点 民事裁判と専門訴訟  門口正人  商事法務

和解交渉と条項作成の実務      田中豊   学陽書房

その他裁判所のHPで判例を多数・インターネットで公開している条文や規則

 

筆者は裁判を始めるにあたってこれだけの本を読みました。読まなくてもいいような本も入っていますが、0から勉強を始めた軌跡とも言えるでしょう。訴訟の内容と本の内容によっては省いて読んでもいい部分などもあるため、筆者もすべての本の内容を隅から隅まで覚えているわけではありません。

いかがでしょうか?勉強するだけでもこのぐらいの量です。あなたがどうしても訴訟に勝ちたいと思うならこのぐらいの「やる気」が必要なのです。