お勉強方法 5 「洞察力」

さて、要件事実まで学習したあなたはほぼ弁護士と同じ「知識」を手に入れたと言っても過言ではありません。

 

しかし、ひとつ重要なことがあります。それは

 
「洞察力」 です。

 

「はじめに1」で洞察力が必要だと言っておきながら、「はじめに4」でも後回しにした理由を明かします。

とにかく間違いが多いのです。これには筆者もかなり翻弄されました。気付かずに訴状や準備書面で主張してしまったら一体どうなるのか?実例を挙げます。

 

著作権法 高林龍 有斐閣

 

こちらの「まねきTV事件」といういわゆるテレビ放送を録画して販売していたという事件ですが、高裁まではまねきTV側の勝訴で、最高裁で逆転し、放送局が勝訴した事件なのですが、この本には(筆者の持っているのは初版)高裁までしか乗っておらず、まるでまねきTV側が勝利したように見えるのです。発行日から最高裁判決が出版に間に合わなかったと考えられますが、うっかりこのまま覚えたら大変なことになります(まあ録画した番組を販売する人もなかなか居ないと思いますが。)。

 

訴訟は本人で出来る 石原豊昭他 自由国民社

 

こちらの本の訴状の書式に遅延損害金が6%と記載されています。はは~んそうなのかとこのまま訴状に書くとやはり痛い目にあいます。
実際は根拠法によって異なり、5%から14.6%と幅があり、6%は商法が根拠法の場合です。民法の場合は5%が正解になります。

 

民事訴訟マニュアル上下 岡口基一 ぎょうせい

 

こちらには民訴法の流れに沿って解説がされているいい本ですが、なぜが一部請求について記述がありません。
さらに上には請求の減縮した場合は提起手数料は減額にならないと書いてあるが、場合によっては印紙代が還付されることの記述がありません。

 

要件事実マニュアル第2版 上 岡口基一 ぎょうせい

 

こちらの本には一部請求について記載があるのですが、一部請求を請求の原因に書けばよいとする意見を紹介してあり、記載してある判例も調べずに請求の原因のみに記載したらかなり痛い目にあいます。実際は請求の趣旨にて全体像を特定して一部請求だと明示するものと請求の原因で明らかにすればよいという意見まで幅があります。本人訴訟をするあなたは担当裁判官がどちらを支持しているのか分かりようがないので、請求の趣旨に明示的に書く方が正解だということになります。筆者の場合は請求の趣旨にかっこ書きで一部請求が認められました。ここを間違えると残部請求が不可能になり、何のために裁判をしたのかわからなくなってしまいます。

 

以上です。筆者もすべての本を一枚一句記憶してすべての内容をチェックしているわけではありませんが、それでもこれだけ間違いがあるのです。あなたは間違いに気付けたでしょうか?ただ普通に本を読んで覚えるだけではダメなのです。どの本もいい本ですが、勉強方法としては同じ民事訴訟法にしても同じ法律の違う本を読んで裏どりしつつ知識を補完するとか、ネットで裏どりする作業もしなければ完全に理解したとは言えないでしょう。自分に必要な法律の条文を「e-Gov法令検索」などで読んでみることも良い勉強になると筆者は考えます。

 

筆者がこのブログでいちばん言いたいのはこの洞察力です。後述の訴訟のお作法でも洞察力について記述したいと思います。
その他直近では民法改正も控えており、遅延損害金も3%に変更になっています。民法改正のタイミングにより、訴状や訴額計算書の内容も変えなければなりません。

 

以上でお勉強に関する記述は終わりです。